タモリさんを体癖的に読む|9種的な独自世界と、前に出ない支配力
タモリさんの旧記事では、9種的な独自世界を主軸にしながら、4種的な「場に溶ける力」、1種的な「俯瞰」、6種的な「脱力・浮遊感」を重ねて考察していました。
ただ、この整理では、「ニッチな趣味があるから9種」「前に出ないから4種」「知的だから1種」「力が抜けているから6種」と、目についた特徴ごとに別の体癖を足していくことになります。
今回は、そこを一度リセットします。
名越式性格分類で9種を見るときに重要なのは、単に「オタク」「独自世界」「こだわりが強い」ということではありません。
身体が縮む方向にあるか。努力して集中するのではなく、対象へ自然に「集注」してしまうか。効率より自分の納得を優先するか。そして、他人や組織から離れた「自由」を強く求めるか。
そこで今回は、幼少期、学生時代、30歳前後の芸能界入り、1980年代の『笑っていいとも!』開始期、長寿番組の司会者となった時期、そして近年の坂道・街歩きまでを時系列で見直しました。
今回も主軸候補は「9種体癖」です。
ただし、旧記事とは理由がかなり変わりました。
「鉄道や坂道が好きだから9種」ではありません。
むしろ決め手になったのは、芸能人になるはるか前から続いている「人から少し離れて観察する」「自分で気になったものには深く入る」「集団の価値より自分の感覚を優先する」方向です。
一方で、タモリさん自身は「何にでも首を突っ込む」「何ひとつものにならない」と語り、31年半の帯番組を続け、学生時代にはジャズ研のマネージャーとして実務までこなしています。
これは「一つに閉じて社会適応しにくい」という単純な9種像への重要な反証です。
その反証まで含め、今回は9種主軸・確度「中」とし、第二候補はあえて置きません。雰囲気だけなら6種が最も近い対抗候補ですが、身体と長期行動まで見ると主軸に上げる根拠が足りないと判断しました。
体癖の基礎を先に知りたい方へ体癖とは何か、体型・感受性・雰囲気からの見方、1~10種の全体像、科学的根拠との関係は「体癖を知る」にまとめています。
本記事は、野口整体から発展した体癖論と、名越康文氏の「名越式性格分類」を手がかりにした一個人の考察です。医学的・心理学的な診断ではありません。
タモリさん本人に直接会って、立位・歩行・骨盤の開閉などを観察しているわけではありません。公開されている写真、映像、本人のインタビュー、著書に紹介されたエピソード等から考えています。したがって、結論は暫定的な仮説です。
また、タモリさんは半世紀以上テレビで活動してきた司会者です。「聞き上手だから4種」「知識が豊富だから1種」「脱力しているから6種」のように、職業上磨かれた技術やテレビ上の役割を、そのまま生来の体癖へ置き換えないよう注意します。
- まず結論|主軸候補は9種。ただし「趣味人だから」ではない
- 幼少期から見る|集団に入るより、石垣から人を観察していた
- 学生時代|「分からないジャズ」を、分かるまで聞き込んだ
- ただし学生時代は、9種だけでは説明できない|演奏家よりマネージャーになった
- 30歳前後の身体を見る|「小柄だから9種」ではなく、縮み方を慎重に見る
- 坂道への集注|「坂が好き」より、見えない細部まで自分で確かめる
- 興味が広いのに9種なのか|「一つの趣味だけ」を条件にしない
- 9種的な「自由」|30歳で決めたルールがかなり特徴的
- 『笑っていいとも!』31年半は、9種説への強い反証
- それでも長寿番組が9種説を崩し切らない理由|仕事を「自分の作品」にしすぎない
- 6種ではないのか|「脱力・夜・横道」は似るが、本質は少し違う
- 4種ではないのか|「場に溶ける」は司会技術として説明できる
- 1種ではないのか|博識でも、理念や体系を立てる方向ではない
- 2種ではないのか|聞き上手でも、正確に「受け取る人」とは少し違う
- 3種・5種・7種・8種・10種はどうか|「できること」と「生命力の中心」を分ける
- タモリさんの笑いを、9種から読み直す|「独自世界」より、視点の一点突破
- 「前に出ない支配力」は体癖ではなく、成熟した仕事術として見る
- 今回の再鑑別|「9+4+1+6」から、まず9種一つで読む
- 反証|典型的な9種より、社会適応がうますぎる
- まとめ|タモリさんは「独自世界の人」より、「自由に観察し、気になる一点へ潜る人」と見る
- 参考にした資料
まず結論|主軸候補は9種。ただし「趣味人だから」ではない
| 主軸候補 | 9種体癖 |
|---|---|
| 確度 | 中 |
| 第二候補 | 現時点では置かない |
| 最も近い対抗候補 | 6種体癖。ただし「脱力・夜・横道」の雰囲気は似るものの、身体と長期的な現実適応が弱く、主候補には上げない |
| 複合の必要性 | 現時点では積極的に採らない |
| 9種を疑う主な根拠 | 幼少期からの観察と一人遊び、自分で選んだ対象への自然な集注、ジャズ・坂道など数十年単位で続く探究、組織や師弟関係から距離を取る自由志向、物事の「普通の見方」をずらす直感 |
| 身体的根拠 | 30歳前後から現在まで、身体を大きく見せず比較的コンパクトにまとまる印象は9種と矛盾しない。ただし骨盤の閉じ・太ももと下腿の比率・歩行は公開資料だけでは十分確認できない |
| 最大の反証 | 関心領域が非常に広く、長期間の帯番組や組織的なテレビ制作にも適応している。学生時代にはマネージャーとして実務もこなしており、「一つに閉じて共同作業が苦手」という教科書的な9種像だけでは説明しきれない |
旧記事で一番弱かったのは、「独自世界がある」という言葉を9種の中心に置いていたことです。
独自の趣味がある人は、どの体癖にもいます。
鉄道が好きでも、ジャズが好きでも、坂道に詳しくても、それだけで9種にはなりません。
9種を見るなら、「何が好きか」ではなく、その対象にどう入っていくのかを見る必要があります。
タモリさんの場合、ここを幼少期まで戻って確認すると、9種説が旧記事よりもむしろ強くなりました。
幼少期から見る|集団に入るより、石垣から人を観察していた
今回もっとも重要だった材料の一つが、タモリさんの幼少期です。
『タモリのTOKYO坂道美学入門』で語られたエピソードを紹介した記事によると、幼稚園へ入る前に見学へ行ったタモリさんは、園児たちがお遊戯をしている姿を見て、それを恥ずかしく、ばかばかしいものと感じ、幼稚園へ通わないことを選びました。
その後、家の前の石垣にもたれ、坂道を行き来する人を来る日も来る日も観察し、頭の中に近所の家と住人の地図を作って遊んでいたとされています。
この話を「一人が好きだったから9種」と短絡するつもりはありません。
重要なのは、みんながやっている遊びへ自分を合わせるより、少し離れた場所から現実を眺め、自分だけが面白いと思う情報を集めて、頭の中に世界を作っていたという行動の形です。
これは、芸能界で「タモリ」というキャラクターが出来上がる前の話です。
テレビ司会者として身につけた俯瞰でも、後から作った文化人キャラクターでもありません。
しかも、子どもの頃に坂の上から人と街を観察していた人物が、何十年後には街の坂、地形、古地図を歩いて読み解き、その対象で本まで作ることになります。
この時系列のつながりは、今回の9種説で非常に重く見ました。
学生時代|「分からないジャズ」を、分かるまで聞き込んだ
早稲田大学時代のジャズとの出会いも、9種を考えるうえで示唆的です。
早稲田大学のインタビューでタモリさんは、それ以前にクラシックからチベット音楽までいろいろな音楽を聴いたものの、自分にぴったり来るものがなかったと振り返っています。
そこで近所の後輩の家でアート・ブレイキーを初めて聴きました。
面白いのは、「すぐ好きになった」のではないことです。
最初は、何がいいのか分からなかった。
だからレコードを借り、自宅で本気で聴き込んだ。そして、自分に合う音楽はこれだと感じ、大学ではモダンジャズ研究会へ入ります。
ここで見たいのは、単なる「ジャズ好き」ではありません。
分からない対象に引っかかり、その引っかかりを放置せず、自分が納得するところまで中へ入っていくという動きです。
名越式9種でいう「集注」は、努力して集中力を発揮することではなく、気になる対象へ意識が持っていかれ、その世界へ入ってしまう感覚として説明されます。
タモリさんのジャズとの出会いには、この「気になったら、そのままでは離れられない」感じがあります。
ただし学生時代は、9種だけでは説明できない|演奏家よりマネージャーになった
一方、この学生時代の話には、9種説への反証もあります。
タモリさんはジャズ研でトランペットを始めましたが、演奏そのものではなく、やがて司会やマネージャーを担当するようになります。
マネージャーとしては演奏先を取ったり、他大学や関係者と連絡を取ったり、先輩から仕事のやり方を引き継いだりしています。
本人も、大学時代のマネージャー経験が現在の仕事の基礎になったと振り返っています。
これは、社会との接点を持つのが苦手で、一人の世界に閉じやすい9種像とは、少し違います。
タモリさんには、必要なときにはかなり現実的に動ける能力があります。
ただし、ここで5種などを追加する必要があるとは考えません。
体癖は「できる・できない」の能力検査ではありません。
9種でも交渉はできますし、マネージャーもできます。
むしろ重要なのは、何十年後まで残った感受性がどこにあるかです。
タモリさんの場合、マネジメントそのものが生涯の中心になったわけではありません。一方、ジャズへの関心は数十年後まで続き、2015年には雑誌『SWITCH』が「ジャズタモリ」と題して一冊を組むほど、本人の世界と深く結びつき続けました。
後天的に獲得した実務能力と、長期間残り続ける感受性は分けて見る必要があります。
30歳前後の身体を見る|「小柄だから9種」ではなく、縮み方を慎重に見る
身体については、1977年の30歳前後の写真、1980年代初頭の写真、『笑っていいとも!』期、近年の立位写真までを見比べました。
若い頃のタモリさんは、現在より当然若く、身体にも張りがあります。
それでも、7種のように身体を大きく見せて前へ押し出す感じや、5種のように前重心で空間へ飛び出していく印象は強くありません。
身体を過度に開かず、上半身が比較的コンパクトにまとまり、存在感のわりに「大きく見せない」印象は、30歳前後から現在までかなり一貫しています。
これは、名越式9種で語られる「縮む」「実際より小さく見える」という身体感とは矛盾しません。
ただし、ここは慎重であるべきです。
9種の身体鑑別で重要なのは、単なる身長や体格ではありません。
骨盤が閉じる方向、太ももと下腿の比率、お尻の位置、身体が中心へ収縮する感じなどを総合して見ます。
公開されているテレビ映像や写真だけでは、そこまでの確認はできません。
したがって、身体は9種説を支持する補助材料ではあるが、決め手にはしないというのが今回の判断です。
坂道への集注|「坂が好き」より、見えない細部まで自分で確かめる
タモリさんの坂道趣味は、旧記事でも9種の根拠にしていました。
しかし今回は、「坂が好き」という事実より、その入り方を見ます。
2004年には『タモリのTOKYO坂道美学入門』を刊行し、2011年には新訂版が出版されています。
そこでタモリさんが「よい坂」として挙げる条件は、単に「景色がきれい」ではありません。
- 勾配が急であること。
- 湾曲していること。
- 周囲に江戸の風情が残っていること。
- 坂の名前に由来があること。
つまり、角度、曲線、歴史、名称という細部を分解して、自分なりの「坂の美学」を作っています。
さらに2022年には、前著から18年ぶりとなる坂道本『お江戸・東京 坂タモリ 港区編』を刊行しました。
紹介資料によれば、自らカメラを持ち、深夜や早朝に裏路地へ出て撮影し、気に入った坂には複数回足を運んでいます。
「日本坂道学会」も、2022年に結成30周年を迎えました。
ここまで来ると、「芸能人の変わった趣味」という一言では片づけにくい。
誰に求められたわけでもない対象へ、自分の時間を使い、長期間入り込み、自分で現場を歩き、細部の違いを確かめ続ける。
この行動の形が9種的です。
興味が広いのに9種なのか|「一つの趣味だけ」を条件にしない
ここで、9種説に対する最大の疑問が出ます。
タモリさんは、むしろ興味が広すぎるのではないか。
これは非常に重要です。
タモリさん自身、1996年のインタビューで、自分はさまざまなことに首を突っ込む一方、一つのものになりきらないという趣旨のことを語っています。
実際、ジャズ、鉄道、地形、坂道、地図、言語の音、船、料理など、関心領域はかなり広いです。
「9種は一つに集注する」という説明だけを字面どおり受け取れば、これは矛盾して見えます。
ただし、名越氏の9種テキストを見ると、「一生一つのテーマだけを持つ人」という意味ではありません。
9種の例として挙げられる南方熊楠は、粘菌だけでなく、民俗学や多数の言語にも通じた人物でした。
9種を見るポイントは、関心対象の数より、気になった対象へ入ったときの深さと、入り方です。
タモリさんの場合、広いテーマを「知識として収集して見せる」というより、ある対象に引っかかると、現場へ行き、細部を確かめ、自分なりの美学や見方まで作る。
しかも、ジャズや坂道のように、何十年も消えない対象があります。
したがって、関心の広さは9種説を否定する決定打にはしません。
ただし、「典型的な一対象への偏執」より広いことは事実なので、確度を「高」にしない理由の一つには残します。
9種的な「自由」|30歳で決めたルールがかなり特徴的
今回、坂道やジャズ以上に重要だと感じたのが、「自由」に対する姿勢です。
日刊スポーツが1996年のインタビューを振り返った記事によれば、タモリさんは30歳で芸能界へ入る際、自分なりのルールを定めました。
その中には、誰かの弟子にならないこと、組織に属さないことが含まれていました。
この二つは、名越式9種の「自由」の説明と非常によく重なります。
9種にとっての自由は、単に旅行へ行けるとか、好きな仕事を選べるという意味だけではありません。
他人の基準、予定、価値観から切り離され、自分の世界へ完全に入れること。
名越氏は、その極端な形を「ひとりぼっち」に近い感覚として説明しています。
もちろん、タモリさんは友人も多く、テレビという大規模な共同作業の中で長く働いてきました。
だから「孤独な人」という意味ではありません。
それでも、芸能界へ入る最初の段階で、師弟関係や組織への帰属によって自分の自由が縛られることを避けるという原則を自ら置いたことは、9種仮説を考えるうえでかなり印象的です。
『笑っていいとも!』31年半は、9種説への強い反証
ここまで9種に有利な材料を並べましたが、最も強い反証も正面から置きます。
1982年に始まった『笑っていいとも!』は、2014年まで31年半続きました。
平日昼の生放送を、ほぼ毎日のように続ける。
しかもテレビは、出演者、制作スタッフ、スポンサー、放送時間など、他人との調整の塊です。
これは、名越式で語られる「自分の納得を優先しやすい」「共同作業で足並みを合わせにくい」という典型的な9種像とは明らかに緊張関係があります。
タモリさんは社会適応が苦手な人ではありません。
むしろ、日本のテレビ史でも突出した長期適応を見せた人です。
この事実を無視して9種と言い切ることはできません。
それでも長寿番組が9種説を崩し切らない理由|仕事を「自分の作品」にしすぎない
一方、その『いいとも!』への向き合い方を見ると、少し面白いことが分かります。
1996年のインタビューで、長寿の秘訣を聞かれたタモリさんは、毎回深く反省せず、放送が終われば引きずらない、という趣旨で答えています。
企画にも細かく口を出さないとされています。
これは9種の「納得するまで細部へ入り込む」姿とは、むしろ逆です。
ただ、ここから別の見方もできます。
タモリさんは、仕事のすべてを自分の集注対象にしなかった。
番組を「自分の作品」として細部まで支配し始めれば、毎日続けるのは難しくなります。
そこで仕事は仕事として受け流し、終わったものは離す。
一方、自分が本当に気になるジャズや坂道、街の構造には、仕事とは別に何十年でも潜っていく。
この「仕事上の適当さ」と「自分で選んだ対象への異様な深さ」が同居しているところは、タモリさんを考えるうえで非常に重要だと思います。
9種だから何にでもこだわる、という読み方はしません。
むしろ、何に集注するかが本人にとって重要なのです。
6種ではないのか|「脱力・夜・横道」は似るが、本質は少し違う
旧記事でも挙げていた6種は、今回も最も近い対抗候補です。
タモリさんには、6種的に見える材料があります。
- 力の抜けた話し方。
- 深夜番組と相性のよい空気。
- 王道から少し外れたものを面白がる。
- 意味のないこと、くだらないことを大切にする。
- 『タモリ倶楽部』に象徴される、横道へそれていく遊び。
雰囲気だけなら、6種はかなり魅力的です。
しかし6種の中心は、単なる脱力ではありません。
後ろ重心、細い身体、現実から少し退く感覚、夢想・憧れ・浪漫、日常の規則的なルーチンとの噛み合いにくさなどが重なります。
タモリさんの関心は、一見すると横道ですが、対象は意外なほど現実そのものです。
坂の角度。
地層。
古地図。
鉄道の構造。
言語の音。
夢の中へ逃げるというより、現実の細部へ異様に近づいていく。
また、学生時代にはマネージャー実務をこなし、その後は31年半の平日帯番組を続けています。
身体も、公開資料を見る限り、6種の典型として語られる長い手足・薄い骨盤・後ろへ抜けるモデル的な線が強いとは言いにくいです。
したがって、6種は「見た目の空気」では近いが、身体とエネルギーの向きでは9種より下げるというのが今回の結論です。
4種ではないのか|「場に溶ける」は司会技術として説明できる
旧記事では、タモリさんの司会を4種的な「場に溶ける力」と表現しました。
今回は、4種を体癖候補としては下げます。
4種で重要なのは、自己主張が弱いことより、相手や場の感情を自分の内側へ受け取りやすいことです。
タモリさんはゲストを受けます。
しかし、相手の感情へ深く同調して巻き込まれていくというより、かなり距離を保ったまま話を聞きます。
大げさな感動へ乗らない。
相手が熱くても、自分まで同じ熱量にはなりにくい。
むしろ、場の温度を少し下げる。
これは4種の感情同調より、長年の司会経験と、9種的に対象と距離を取る姿勢でかなり説明できます。
したがって、旧記事の「9+4」という複合は、現時点では積極的に採りません。
1種ではないのか|博識でも、理念や体系を立てる方向ではない
タモリさんは博識です。
地理、歴史、鉄道、音楽、言語などについて、テレビでかなり専門的な話をします。
そのため旧記事では、1種的な知性・俯瞰も加えていました。
しかし、「知識が多い」「一歩引いて見る」だけで1種にはしません。
1種の中心は、観念・理念・原則を立て、世界を頭の中で構造化する方向です。
タモリさんの知識は、それよりも現場から始まることが多い。
実際に坂を歩く。
地形を見る。
音を聞く。
街を観察する。
そこから「ここがおかしい」「ここが面白い」と一点へ入っていく。
知識を大きな思想体系へ整理して人へ教えることより、対象そのものへ潜って、自分の見方を作る方向が強い。
この差から、1種は主候補から外します。
2種ではないのか|聞き上手でも、正確に「受け取る人」とは少し違う
司会者としてのタモリさんは、相手に話させるのが上手です。
その点だけなら、言葉や前提を受け取る2種にも見えます。
ただ、2種的な聞き方では、相手が実際に何と言ったか、条件は何か、留保はどこかを正確に受け取る方向が強く出ます。
タモリさんの聞き方は、それより自由です。
相手の話から一つ気になる言葉を拾い、急に別の角度へ飛ぶ。
正確に受け取って整理するというより、自分の感覚に引っかかった一点から、世界の見方をずらす。
また、身体も2種で語られる細い首・なで肩・枝のような縦長の線が決め手になるほど強くは見えません。
2種も主候補には置きません。
3種・5種・7種・8種・10種はどうか|「できること」と「生命力の中心」を分ける
残る体癖も、一度だけ整理しておきます。
| 候補 | タモリさんに見える部分 | 主軸に置かない理由 |
|---|---|---|
| 3種 | 遊び、即興、ユーモア、その場を軽くする力 | 好き嫌い・感情・気分が前へ出て生命力を動かす感じは主軸として弱い |
| 5種 | 学生時代のマネジメント、会社員経験、長期の実務能力 | 効率・成果・前進そのものが興味の中心ではなく、身体にも強い前重心の印象が乏しい |
| 7種 | 芸能界で長く第一線に立った強さ | 張り合い・勝負・声や身体で押す方向がかなり薄い |
| 8種 | 長寿番組を何十年も続けた継続性 | 努力・我慢・準備によって「負けない形」を作るというより、反省しすぎず力を抜いて続ける発想が強い |
| 10種 | 司会者として人を受け入れる大きさ | 世話を焼く、弱い人を懐へ入れる、広く抱えることが生命力の中心とは見えにくい |
ここで大切なのは、「長く続けられるから8種」「実務ができるから5種」としないことです。
著名人は、その仕事で成功するために多くの能力を獲得します。
体癖を見るなら、何ができるかより、何に自然と引き寄せられ、どこで本人の生命力が立ち上がっているように見えるかを優先します。
タモリさんの笑いを、9種から読み直す|「独自世界」より、視点の一点突破
旧記事では、タモリさんの笑いを「世界の見え方を少しずらす笑い」と表現しました。
この見方自体は、今回も残します。
ただし、それを1種の俯瞰+4種の場への同調+9種の独自世界、という複合で説明する必要はありません。
名越式の9種では、最初から論理を積み上げて結論へ行くというより、先に直感的に「ここだ」と捉え、その後から言葉が追いつくような理解の仕方が語られます。
タモリさんの笑いにも、この感じがあります。
大きな理論を説明するのではなく、誰も気にしていなかった一点を拾う。
言葉の音がおかしい。
坂の曲がり方がおかしい。
街の段差に過去の地形が残っている。
外国語のように聞こえる日本語がある。
普通なら背景へ消えていくものの中から、一点だけ異様に鮮明なものを拾い上げる。
そして、それを見せられた側は「確かにそう見える」と世界の見え方を少し変えられる。
この笑いの作り方は、単なる「知的な笑い」より、9種的な集注と直感がテレビ向けに非常に洗練された形と見る方が、今回の再鑑別には合っています。
「前に出ない支配力」は体癖ではなく、成熟した仕事術として見る
旧記事のタイトルでは、タモリさんを「前に出ない支配力」の人と表現しました。
この表現は、司会者としてのタモリさんを説明する言葉としては今もかなり的確だと思います。
ただし、それ自体を体癖の根拠にはしません。
30年以上、毎日違う出演者を相手に生放送を続ければ、前へ出すぎず、相手を生かし、必要な瞬間だけ方向を変える技術は当然磨かれます。
これは4種を足すより、9種候補の人物が、長年の司会経験によって獲得した高度な職業技能として切り分けた方がよいでしょう。
体癖とスキルを分けることで、かえってタモリさんの特殊さが見えやすくなります。
今回の再鑑別|「9+4+1+6」から、まず9種一つで読む
| 観察材料 | 旧記事の見方 | 今回の見方 |
|---|---|---|
| 鉄道・坂道・地形・ジャズ | 9種的な独自世界 | 趣味の内容ではなく、長期的な集注・現場確認・自分の納得まで掘る行動を9種の根拠にする |
| 幼少期の人間観察・頭の中の地図 | ほぼ未検討 | 職業形成前から続く9種仮説の重要材料として追加 |
| 身体のコンパクトさ | 9種 | 30歳前後からの時系列で確認。ただし骨盤等は不明なので補助材料に限定 |
| 場に溶ける司会 | 4種 | 長年の司会技能で説明できるため、4種を足さない |
| 俯瞰・博識 | 1種 | 体系化より現場・対象への潜り込みが強いため、1種を足さない |
| 脱力・深夜番組・横道 | 6種 | 対抗候補として検討。ただし夢想より現実の細部へ向かい、身体・ルーチン適応も6種の決め手に欠ける |
| 31年半の『いいとも!』 | 継続力 | 9種説への強い反証として明示。ただし仕事を細部まで自分の作品化せず「離す」運用も確認 |
| 師を持たない・組織に属さないという原則 | 未検討 | 9種で語られる「自由」との整合性を重視 |
旧記事では、タモリさんを説明するために9種、4種、1種、6種を並べました。
今回の方針は逆です。
まず9種という一つの仮説で、幼少期から現在までどこまで説明できるかを見る。
司会技術や社会適応は、必要なら後天的能力として分ける。
それでも一貫して説明できない身体・感受性が残った場合にだけ、第二候補や複合を検討する。
今回は、6種を対抗候補としてかなり検討しましたが、第二候補として並べるほどの決め手は確認できませんでした。
反証|典型的な9種より、社会適応がうますぎる
最後に、9種説の弱いところを明確に残します。
第一に、身体です。
公開写真から「大きく見せない」「比較的まとまって見える」という印象は取れますが、9種鑑別で重要な骨盤の閉じ、太ももの比率、身体の収縮を直接確認できるわけではありません。
第二に、興味の広さです。
9種は一対象へ視野が狭くなるほど集注するタイプとして説明されますが、タモリさんは極めて多趣味です。
第三に、社会適応です。
保険会社、ボウリング場、大学ジャズ研のマネージャー、テレビ司会者と、現実的な役割をかなりこなし、31年半の生放送まで続けています。
これは、教科書的な9種像より明らかに柔軟です。
そのため、現時点の確度は「高」ではなく「中」とします。
直接対面し、全身の立位・歩行・骨盤の開閉を観察できれば、6種その他との優先順位が変わる可能性は残ります。
まとめ|タモリさんは「独自世界の人」より、「自由に観察し、気になる一点へ潜る人」と見る
今回の再鑑別では、タモリさんの主軸候補を9種体癖としました。
ただし、その理由は「変わった趣味が多いから」ではありません。
幼稚園の集団遊びに入るより、石垣から人を観察していた。
分からないジャズに引っかかると、分かるまで聴き込んだ。
坂道に興味を持つと、角度・曲線・名前・歴史まで分解し、自分で歩き、自分で撮影し、何十年も追い続けた。
芸能界へ入るときには、師弟関係や組織への所属から距離を取る原則を置いた。
そして笑いでは、全体を大きく動かすより、誰も見ていなかった一点を拾い、そこから世界の見え方を変える。
この流れには、9種の集注・納得・自由・一点への直感がかなり一貫して見えます。
一方で、関心は広く、実務能力があり、長寿の帯番組を続けられるほど社会適応も高い。
だから「典型的な9種」と断定することもしません。
6種的な脱力、4種的に見える聞き方、1種的に見える知性を次々と足すのではなく、まず9種という一つの仮説で読む。
その仮説で説明できないものは、職業技能なのか、本当に別の体癖なのかを分けて考える。
現時点では、この整理がタモリさんの幼少期から80代までを最も少ない仮定で説明できると考えます。
1~10種全体を比較したい方は、「体癖一覧|1種から10種までの特徴・感受性・見分け方」へ。
参考にした資料
- 名越康文『名越式性格分類ゼミ公式テキスト Vol.1 体癖の基本』
- 名越康文『名越式性格分類ゼミ公式テキスト Vol.2 9種体癖』
- 名越康文『名越式性格分類ゼミ公式テキスト Vol.13 診断力を高める――著名人の体癖診断』
- 早稲田ウィークリー「第800号記念 タモリ ロングインタビュー」(学生時代・ジャズとの出会い・ジャズ研での活動)
- 日刊スポーツ「何にでも首を突っ込む。でも、何ひとつものにならない。ひと言で言うとテ・キ・ト・ーなんです」(1996年インタビューの再録・仕事観と芸能界入り時の原則)
- お笑いナタリー「タモリのプロフィール・作品情報」(芸能活動の時系列確認)
- フジテレビ「笑っていいとも!第1回放送で、深夜番組発のタモリの笑いがお茶の間に浸透」(1982年~2014年の放送期間確認)
- アーバンライフ東京「『ブラタモリ』で知識爆発 タモリはなぜこんなにも『坂道』が好きなのか」(『タモリのTOKYO坂道美学入門』で語られた幼少期のエピソード)
- Books 出版書誌データベース『タモリのTokyo坂道美学入門』(2004年刊行の確認)
- 丸善ジュンク堂書店『新訂版 タモリのTOKYO坂道美学入門』(2011年新訂版・「よい坂」の条件)
- ART NEXT「タモリさん18年ぶりの坂道本『お江戸・東京 坂タモリ』」(2022年の坂道撮影・日本坂道学会30周年)
- SWITCH 2015年5月号「ジャズタモリ」(長年続くジャズへの関心の確認)
- 週刊女性PRIME「30歳ごろのタモリ(1977年)」(若年期の身体・顔の確認)
- 『お江戸・東京 坂タモリ』掲載写真(近年の立位・身体印象の確認)
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